ハイテク&カラー 大日精化工業株式会社

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Project Story 03 営業・用途展開編既存技術をブラッシュアップし、新たな市場を開拓せよ。

1980年代から開発を始めた熱可塑性ポリウレタン(TPU)。ファインポリマー事業部営業統括部の鈴木貫太郎たちは、諸先輩から受け継いできた技術やノウハウを活かしながら、新たな市場開拓に挑戦し始めている。

Phase1課題となったのが、“半月以上連続生産”という生産安定性

1980年頃、熱可塑性ポリウレタン(TPU)はゴムとプラスチックの中間にあり、弾性や伸縮性の自由度が高い特性を生かして一般的にチューブ・ホース材料、ベルト材料などに用いられていた。しかし当時、大日精化ではTPUの立ち上げ段階で、他の用途への展開が見込まれることは掴んでいたものの、どのように展開していくかはまだはっきりしていなかった。

そんな折、ある顧客から新規ウレタンでの製品開発を目的に「TPUのサンプル提供」の依頼が数社のメーカーにあった。大日精化も早速サンプル品を提出すると、工程不具合が発生しにくいという利点が評価され、顧客との共同研究が始まった。

そして1985年頃には大日精化のTPUは工場用手袋などの産業用資材として採用されたのだが、幾つかの要因から生産が安定しにくいことがわかった。顧客の生産ラインは半月以上連続生産するため、生産効率性が重要視されたが、大日精化のラボ機では24時間までの連続生産が限度だった。それでも安定した品質を保つためにトライアンドエラーを続けていった。その結果、何とか顧客の生産設備・生産方法に合わせたTPUを実現し、生産安定性が得られるようになった。

Phase2“カスタマイズ”によって得られた信頼関係

大日精化の製品を少しでも使いやすく調整をする――これこそが当社の強みの1つである“カスタマイズ”である。当初、大日精化は顧客の連続生産時における安定性を自社内で再現できず悩んでいたが、顧客にとって“理想の製品”とは何か、どうすれば安定稼働を実現できるかを技術や生産だけでなく、営業担当も交えて話し合い、これを地道に実行してきた。

このカスタマイズ重視の姿勢が顧客からより信頼されるようになり、1986年には新規開発テーマであるウレタンとの複合材料での共同開発も始まった。その商品は1987年にパーソナルケア製品の複合材料として採用され、その最終製品は市場でも大好評であった。

Phase3

現在、営業担当としてこれらの製品を先輩から受け継いだのが、ファインポリマー事業部の鈴木貫太郎である。鈴木は、先人たちが築いてきた顧客との信頼関係を維持・発展させるために、さらなる品質改善・納期要求に適切に応えるよう、技術・生産・品質保証部門との調整に奔走している。

一方で、新たな市場――エレクトロニクス分野や環境分野の開拓にも取り組んでいる。その一つが、電子基板などを密着させるフィルム素材の開発だ。そのヒントになったのが「官能基付与型ポリウレタン溶液」である。このウレタン溶液はVHSなどの磁気記録用の接着素材として使用されていたが、VHSそのものの需要がなくなったため、生産が下火になっていた。しかし、この素材は接着性、金属分散性に優れており、「一工夫することで応用展開できるのでは」と鈴木は考えていた。

電子材料メーカーに営業で訪れた際、この素材の特性を紹介してみたところ、先方から好反応があり、具体的な開発へと進めていった。先方が要求する性能を出すには一筋縄ではいかなかったが、技術担当者と一緒に先方の研究所に伺い、何度も議論をした。その成果で、ようやく生産の前段階まで進むことになった。“カスタマイズ”という大日精化のDNAが発揮されたのである。

Phase3“5年10年と継続する市場”を目指して

加えて、自動車部品メーカーへのアプローチにも積極的に取り組んでいる。これは車両の外装を塗料からフィルムに置き換えるというもので、鈴木は半ば飛び込み営業的に塗装メーカーを訪れ、フィルムにすることでのメリットなどを説明した。当初は本当に実現可能かどうかがわからなかったが、ようやく既存技術を活用していけば実現できるという確信を得られるまでにはなった。もちろん、本格生産までにはさまざまな課題が山積しているが、塗料からフィルムへというこれまでにない市場をつくりだすことに期待が高まっている。

いつかは諸先輩が切り拓いてきたような“5年10年と継続する市場”を開拓して後輩につないでいきたい――鈴木は、そんなことを夢見ている。

プロジェクトを振り返って

面白いかどうかが大事――これが今の私の仕事のモットーです。

もちろん、諸先輩が築かれてきた信頼関係を維持・発展させるのは大前提です。そのうえで自らも新しい顧客との信頼関係を築くため、日々仕事に取り組んでいます。だからこそ、自分が「面白い!」と思って取り組めるかどうかが重要なのです。

面白いと思えば、自然と熱意も高まりますし、技術や生産に業務を依頼するにも、その熱意が伝わります。また、技術や生産担当から信頼されるために、自らの発言と行動に責任を持ち、一生懸命に取り組んでいます。そうした社内の信頼関係なくして共同開発先のパートナーとの信頼関係は構築できません。

これからもさまざまなことにアンテナを伸ばし、“面白い”ことをどんどん見つけていきたいと思います。

ファインポリマー事業部営業統括部
鈴木 貫太郎