ハイテク&カラー 大日精化工業株式会社

文字サイズ

Project Story 02 海外事業編インドネシアの印刷市場を攻略せよ。

グラビアインキの製造・販売の拠点として1995年に設立されたインドネシアの「PT. Hi-Tech Ink Indonesia」。現在、約300名の現地社員の現場力・営業力を武器に“インドネシア系大手食品会社向け”の食品パッケージ用インキを販売し、年々その市場性が高まっている。そうした成長性を支えているのが、齊藤廣明ら2名の駐在員である。

Phase1“青天の霹靂”だったインドネシアへの転勤

インドネシアのジャカルタの朝6時。道路のはるか先までバイクや自動車がひっきりなしに続いている。日本では考えられない通勤渋滞だが、齊藤廣明はすっかり慣れた様子でのんびり街並みを眺めていた――と、いまではすっかりインドネシアでの生活に慣れた齊藤だが、インドネシアへの転勤は“青天の霹靂”だった。

それまで齊藤が所属していたのはグラビアインキ事業部で、国内の大手印刷会社の担当だった。入社当時からB to Bの大きな金額を扱うビジネスに関わりたいと考えていた齊藤にとって、願ったり叶ったりの仕事だった。入社10年で製品知識や業界知識を深め、顧客とのコミュニケーション能力の高さから重要製品のプロジェクトリーダーも任されていた。そんな時に、突然の辞令が下った。

PT. Hi-Tech Ink Indonesia(以下HTI)の取締役に任命する――人口2億4,000万、リーマンショックで一番影響を受けなかった国としても有名な期待の新興国インドネシアで、グラビアインキ市場での地位を確立すること。それが齊藤に与えられた新たなミッションだった。

Phase2インドネシアのことは、インドネシア人が一番分かっている

当時、海外でのビジネスを経験できることを喜んだ齊藤だったが、インドネシアに行ってみて、日本との文化の違いや環境の違いには、驚かされっぱなしだった。まず、英語がほとんど通じない。HTIのマネジャークラスとの会話でも、日本語や英語はほとんど通じず、インドネシア語を覚えなければ会話ができない。また、イスラム圏独特の断食期間の対応などの風習の違い、雨季の定期的な洪水や火山の噴火などの環境の違いも大きかった。

そして、極めつきなのが「役割」の違いだった。実は、齊藤は部下を持った経験がなかったのだ。それがHTIに赴任してから、約300名の社員を抱える、取締役(Director)となった。HTIには20年以上働くベテラン社員もたくさんいる。そんな同僚たちとの距離感をどう掴むかに頭を悩ませ、いろいろと試行錯誤していった。そんな中で齊藤は「インドネシアのことはインドネシア人が一番分かっている」ということを学んだ。

HTIは、インドネシア系の顧客が大半を占めており、営業的にもローカライズされた会社である。当然、インドネシア独特の交渉術、やり方がある中で“日本の型”を無理やり当てはめようとすれば現場が混乱する。齊藤が営業出身者であっても、現地の営業活動は現地の社員に任せる。そして、その責任はダイレクターである自分が取る――インドネシア市場に根差したHTIに赴任したことで、海外でビジネスをしていくために必要なことは何なのかを現地社員から教わったのだ。

Phase3「新倉庫設立および設備増強」プロジェクト

ようやくインドネシアに慣れてきて、コミュニケーションも取れるようになった頃、HTIに新しいプロジェクトが立ち上がる。それは「新倉庫設立および設備増強」プロジェクトだった。

営業職として働いてきた齊藤にとって初めて担当する仕事であった。当然、工場については一切無知であり、何から進めて良いのかも全くわからない。日本にいる社内の専門家らに全体の立案から詳細仕様の決定までお願いし、わからないことを問い合わせては、それを工務店や現地社員に落とし込み、またわからないことを再度問い合わせしていく…という毎日が始まった。

そうして倉庫建設は順調に進み、無事、納期前完成にこぎつけたが、その後の設備増強についてはさらに多くの苦難を潜り抜けなければならなかった。というのも、設備増強のためには、電気、各種配管などのユーティリティ設置と並行し、各種生産機などの仕様選定、受入れも実施しなければならない。さらに取り扱う製品が危険物のため、厳重な防爆対策は必須で工事にも一切火を使えない。納期が約7カ月間と決められているが、内容は最もHTIに適している形のものにしていかなければならなかった。

そんなぎりぎりのスケジュールですべてを同時並行し進めている中で、最悪の問題が発覚した。ある生産機の完成立ち会いに現地社員と向かったところ、一部図面と違う形で作られており、そのまま工場に持ってきても配管接続できない形となっていたのだ。補修には1週間を要し、そこから輸入するため、スケジュールが大幅に遅延し、移設作業が納期に間に合わない。そこで機械メーカーにお願いし、大幅に納期短縮して対応してもらうとともに、HTI内で生産調整を実施。その結果、何とか事なきを得ることができた。

そして2015年7月に無事完成に漕ぎつけた設備増強プロジェクトは、現在、インドネシア国内の巨大な需要を現地社員が自らの手で掴み、現在更にHTIを成長させる原動力となっている。

Phase3大日精化にとっての見本となるくらいHTIを成長させたい

既存事業の延長ではなく新規事業を一から立ち上げてみなさい。責任は俺が取るから――と最も厳しく難しいながらも、最もやりがいのある仕事を現地法人社長から任された齊藤は、現在、「パーソナルケア分野」「アパレル分野」などの新規事業に取り組んでいる。最初は製品の中身も、客先も売り方もわからない“産みの苦しみ”を味わったが、現地社員の力を借りて少しずつ実績化が進んできている。

日本国内の各事業部の枠を超えて他分野の製品も生産できる体制となること、つまり「拠点の複合化」は、大日精化の海外拠点に与えられたミッションであるとともに、現地社員にとっては今までにない新しい事業展開の種を与えられることを意味する。齊藤は「大日精化グループの見本と言われるくらいまでHTIを成長させる」ことを今後の目標に定めている。

新規分野への挑戦によって、さらにHTIを成長させ、社員のモチベーションも前向きにしていけるような試みを、現地社員主導の下で続けていくこと。それが目標への一番の近道と考えている。

Terima kasih(ありがとう)! ――と現地社員から思われ続けられるように、今後も齊藤はベストを尽くしていく。

プロジェクトを振り返って

新倉庫設立と設備増強に対応することになった際、嫌がらせのように毎日問い合わせを続ける私と同僚の技術担当に対して、嫌みの一つも言わず対応してくれた日本の諸先輩方には、今も本当に頭が上がりません。

そのほかにも、設備増強が完成するまでさまざまなトラブル――機械が動かない、補修業者に連絡しても約束日時に来ない――などが頻発しましたが、時には日本からの助言を伝え、時には現地社員に全面的に任せ、最終的に工場完成にこぎつけることができました。

インドネシアに根差し、成長し続けていくHTIに今後とも期待してください。

PT. Hi-Tech Ink Indonesia
齊藤 廣明

2016年5月31日現在