ハイテク&カラー 大日精化工業株式会社

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気候変動への取り組み(TCFD)

当社グループでは、気候変動対応はサステナブル社会の実現にとって避けられない重要な経営課題と位置づけ、2021年にTCFD※1提言に賛同し、2022年からCDP※2気候変動プログラムに参加しました。これを機に、気候変動に関する対応状況、外部からの評価結果を積極的に社内へ情報共有し、全社的な意識向上を図っています。今後もIPCC※3の第6次報告の1.5℃シナリオに沿って2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを強化していきます。

  • ※1 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):気候関連財務情報開示タスクフォース
  • ※2 CDP(Carbon Disclosure Project ):企業や自治体の環境情報開示のための世界的なシステムを運営する非営利団体
  • ※3 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):気候変動に関する政府間パネル

ガバナンス

当社グループでは、気候変動によるリスクと機会に関する全社的な活動を重要な経営課題の1つと捉え、代表取締役社長の指示のもと、CSR・ESGの考え方、推進体制にて取り組んでいます。

リスク・機会の分析と戦略

当社グループでは、CSR・ESG推進本部にて、気候変動により生じるリスクについて、法令改正や業界動向の変化などによる規制強化や需給構造の変化を移行リスク、自然災害へのレジリエンス強化や温暖化の進行による労働環境の悪化を物理的リスクと捉え、これらリスク内容に応じて実行部門である各機構および関係部署にリスク対応業務を指示しています。また、代表取締役社長の指示のもと、サプライチェーンの一員として気候変動対策に貢献するため、サプライチェーンパートナーの方針および要請と国際的な調査報告書※4および環境省の解説書を基にリスク分析を行っています。地球の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるための1.5℃シナリオの実現、および2050年カーボンニュートラルに向けた新たな目標設定と移行計画に取り組んでいます。各シナリオによるリスクと機会は、影響度と発生可能性から優先度を考慮し、当社グループの製品開発と事業戦略に取り込むとともに、今後もさまざまな動向を注視し、定期的な評価と見直しを進め、情報開示を行っていきます。

  • ※4 IPCC:SSP1-1.9、IEA( International Energy Agency) World Energy Outlook:Net Zero Emission by 2050 Scenario

1.5℃シナリオ想定概要 4℃シナリオ想定概要
地球温暖化防止に向けた規制強化や地球温暖化防止に貢献する需要構造の変化が加速。将来的に炭素税の単価が欧米先進国並みに上昇すると考えられる。自然災害の影響も現在よりも重視する必要があると想定。 地球温暖化が深刻化し、平均気温上昇による需要構造の変化と労働環境への影響が発生。大規模な自然災害による事業活動への影響が頻発すると想定。

リスク分析と対応策

1.5℃シナリオ

リスク分類 想定リスク及び財務影響 対応策
移行リスク
  • 炭素税導入による財務負担増
  • 適切な価格で再生可能エネルギーを調達することで、GHG排出量の削減と財務面への影響を軽減させる
  • 継続的な省エネ対策の実施
    想定削減炭素税:約388百万円(国内グループ)
  • GHG排出量削減規制の強化
  • 顧客からのGHG削減要請の強化
  • 化石資源由来の原料調達が困難になる
  • 原材料の脱炭素化の開発を進める
  • 需給構造の変化により商機を損失する
  • 業界動向を迅速に社内展開し、事業活動を強化する
物理的リスク
  • 自然災害によるサプライチェーン寸断による事業活動停滞の影響
  • 原材料調達地域、購入会社の分散化
  • 物流への影響軽減に備えた在庫管理
  • 製造現場の作業環境の悪化及びそれによる設備投資額の増加
  • 作業環境改善と生産効率向上に寄与する効率的な設備投資を行う

4℃シナリオ

リスク分類 想定リスク及び財務影響 対応策
移行リスク
  • 需給構造の変化に対応する製品開発力の強化
  • 業界動向、市場動向を迅速に社内に展開し、製品開発と事業計画に反映
物理的リスク
  • 大規模な自然災害による設備の損傷による事業活動停滞の影響
  • 豪雨時の浸水による製品と原材料在庫の損失(想定額算出済み、非公開)
  • ハザードマップに応じた設備改修促進
  • 生産拠点の分散化
  • 豪雨災害時の有害物質の流出防止策
  • 製造現場の作業環境の悪化を改善するための、設備投資増加
  • 製造現場の暑さ対策、人的負荷軽減の設備投資を行い、生産効率の低下を防止
  • ※ 社内カーボンプライシングの実施(国内グループ)
    設定単価: 14,500円/t-CO2
    影 響 額: 当社が排出するCO2に対して、、9.7億円
         サプライチェーンにおけるCO2に対して、最大想定 81.6億円
    活 用 例: 事業の収益性分析
         省エネ設備導入時の改善効果金額に算入し、投資を促進。

機会分析と戦略

1.5℃シナリオ

想定機会 戦略(以下の製品の開発と販売の促進)
脱炭素化に貢献する製品の需要拡大
  • 自動車のEV化、自動運転化の促進
  • 自動車の軽量化促進
  • 電力インフラの需要拡大
    サステナビリティ貢献製品の拡販:2027年3月期に30億円増(2024年3月比)
  • 二次電池向け製品
  • 自動車向けワイヤーハーネス関連製品
  • 自動車の軽量に寄与する製品
  • 太陽電池向け製品
  • CO2を原料とするポリウレタン
サーキュラーエコノミーに向けた需要変化
  • プラスチック資源リサイクルが加速
  • バイオマス由来の製品需要が拡大
  • 軟包装材向け脱墨型インキ
  • バイオマス由来原料の樹脂パウダー
  • バイオマス由来原材料のインキ、接着剤

4℃シナリオ

想定機会 戦略(以下の製品の開発と販売の促進)
気温上昇による生活様式、需給構造の変化
  • 暑さ対策のための建築物の仕様変更
  • 飲料容器需要の拡大
  • 建築物の空調の省エネ向け遮熱塗料
  • 飲料用軟包装向けインキ関連製品
激甚自然災害に備えたインフラ強化事業の拡大に向けた製品の需要拡大
  • 電力、通信インフラの更新需要が拡大
  • 建築物の改修工事需要の拡大
  • 高速大容量通信線向け被覆材用着色剤
  • 建築外装材向け高耐候性塗料用色材
  • 高強度、高耐久繊維向け着色剤

指標と目標と進捗実績

指標(KPI): 国内拠点のエネルギー消費に伴い排出される温室効果ガス(Scope1+Scope2)

目標値:2024年3月期に2014年3月期比70%削減※5
進 捗:2024年3月期実績 2014年3月期比78%削減

  • ※ GHGサプライチェーン排出量 2023年3月期Scope1・2・3のデータは「環境マネジメント」をご覧ください。
  • ※5 実質再生可能エネルギー100%の電力を調達する電力会社の調整後CO2排出係数にて算定

気候変動対策を含むサステナビリティ貢献製品の売上高を、2024年3月期に2021年3月期比20%増を目指す。

進 捗:サステナビリティ貢献製品の売上高
    2024年3月期実績 2021年3月期比23%増

2024年3月期 製造拠点における主な省エネルギー対策の実績

  • ボイラーの排熱利用と放熱ロスの削減:年間効果92KL(原油換算)相当
  • 生産工程の合理化によるエネルギーの削減:年間効果37KL(原油換算)相当
  • 太陽光発電設備による年間発電量:年間800MWh強
  • 水リスク対応と水資源の有効活用

    気候変動(地球温暖化)対応

    • 二次電池、太陽電池用部材
    • 自動車の軽量化に寄与する樹脂製品
    • UV・EBインキ、コーティング剤
    • CO2を原料とした素材
    • 建築物の省エネ用遮熱コーティング剤・高断熱窓向け樹脂製品

    サーキュラーエコノミー対応

    • バイオマス由来の製品(インキ、ウレタン樹脂、樹脂パウダー)
    • 軟包装材リサイクル用脱墨型インキ
    • 天然物由来高分子(キチン・キトサン)

    その他 社会貢献に向けたアイテム

    • 軟包装材向けガスバリア性コーティング剤・接着剤(フードロスの削減)「緩和」
    • 高圧送電線の被覆材向け素材(電力インフラの強化)「緩和」
    • 高速大容量通信線向け被覆材用着色剤(通信インフラの強化)「緩和」

    水リスク対応と水資源の有効活用

    国内外における気候変動の影響により、渇水や洪水などの問題が深刻化しているなか、当社グループでは、水リスクの把握と対応、水資源の有効活用を重要な課題と捉えています。水害や水質規制などの水リスクは製造拠点の活動に大きな影響を及ぼすため、拠点ごとに適切な水リスクの把握と管理に努めています。
    国内拠点では自治体のハザードマップなどに基づき、地域別のリスク調査を実施しています。海外拠点では、流域の水リスク把握とその対応・対策に関するヒアリングを検討しています。水害リスクが大きいと想定される拠点についは、化学物質の近隣への流出防止対策、浸水被害を最小限に抑える設備的な対策、初動対応マニュアルの整備などのBCP対策を行っています。
    評価ツールとしてAqueduct Water Risk Atlas※6を使用し、水ストレス、干ばつリスクが「高」 を含むと判断された地域(中国・上海、ベトナム、インド)にある製造拠点を特定しています。これらの拠点においても、水の循環利用を徹底し、用水使用量、COD排出量、製品の水原単位を報告し、評価を行っています。また、水資源の保護、水質汚染のリスク防止のため、製造拠点では生産向け用水の循環利用と適切な排水管理を行っています。水使用量が特に多い拠点の1つである東海製造事業所では井戸水の用水量を2023年3月期比で約7%削減しました。製造拠点の排水は、活性汚泥法を用いた排水処理設備などの処理設備を適切に運用することで、排水基準以上に浄化して放出しています。物理的リスク評価に加え、今後は製造拠点でのインパクト評価を実施し、その結果を基に必要な対策と対応を事業戦略に反映させていく計画です。

    • ※6 Aqueduct Water Risk Atlas:国際環境NGOの世界資源研究所(WRI)が発表している、世界各地域の流域別水リスク評価ツール