生物多様性への取り組み(TNFD)
生物多様性の保全に関する考え方
当社グループでは、事業活動による生態系への負荷を最小限に抑えるために、事業活動が生物多様性の保全に与える影響を、TNFDの枠組みの素案に基づき製品のライフサイクル全般においてリスクと機会の両面から把握し、TCFDと相互に連携させ、当社技術を活かして生物多様性の保全と持続可能な利用に貢献する価値の創出に努める事が重要であると認識しています。 その実現に向けて、揮発性有機溶剤や特定化学物質の使用により生じる大気汚染や水質汚染等の環境負荷軽減に向けた自らの管理活動と、当社グループの製品使用段階で生じる環境負荷軽減に貢献する製品開発の両輪で推進しています。 また、当社グループが現在加盟しているクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)をはじめとするイニシアティブへの参加や事業所の近隣地域コミュニティーとの協働作業にも積極的に参加し、生物多様性の保全と再生に努めています。
ガバナンス
生物多様性の保全に関するガバナンスは、CSR・ESG推進体制と同様に、以下の体制で取り組んでいます。
戦略
当社グループのライフサイクルにおけるリスクと機会を以下の様に特定し、取り組んでいます。
リスクと機会 | 当社グループの取り組み | 主な取り組み事例 | ||
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原材料 調達 |
リスク | 生態系の破壊や貴重な種の絶滅を防止、保全するために植物や鉱物の採取の制限が生じる | 購買方針に基づき、生態系に悪影響を与える事が確認されたサプライヤーからの原材料調達の停止 | サプライヤー調査の実施と継続的改善を要望 |
水リスク地域における揚水量の制限が生じる | 工場における揚水量の削減 | 冷却水の循環利用 | 機会 | 生態系の保護に配慮した原材料を使用した製品、貴重な資源の枯渇防止に繋がる製品の市場価値が高まる |
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製品開発 製造 ・ 物流 |
リスク | 水系の生態系の保全のために、水域への排水管理の規制が強化される。また法令違反した場合、生産活動が停止する可能性がある |
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大気汚染に繋がる有害物質を含む原材料、資材の使用に関する規制が強化される |
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機会 | 有害物質の使用量を減らした環境配慮型製品の市場価値が高まる |
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廃プラスチックによる水系の汚染防止の意識が高まる | 海洋のマイクロプラスチックによる汚染防止に貢献できる水系での生分解性プラスチックの開発を促進する | 生分解性を有する樹脂パウダーの開発 |
その他 | リスク | 過去に発生した当社グループ敷地内の土壌汚染物資が拡散するリスク | 土壌汚染が確認された事業所では、直ちに行政と協議の上、汚染の拡散防止対策と浄化作業に着手している | 東京製造事業所、東海製造事業所で実施中 | 機会 | 当社グループの事業所外の近隣地域の生態系の保全活動を行い、社会的な価値を高める | 近隣のコミュニティーと協働し、事業所周辺の美化活動、緑化の支援、水系の保全活動を推進する | 各事業所で、近隣の清掃活動や生態系の保全活動に努める |
想定機会と注力事業は以下のとおりです。
想定機会 | 注力事業(以下の製品開発と販売促進) |
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大気への有害物質の使用量を減らした環境配慮型製品の市場価値が高まる |
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水系への有害物質の使用量を減らした環境配慮型製品の市場価値が高まる |
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廃プラスチックによる水系の汚染防止の意識が高まる |
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リスク管理
当社グループでは、CSR・ESG推進本部にて、生物多様性の保全に関するリスクについて、気候変動への取り組みと同様に法令改正や業界動向の変化などによる規制強化や需給構造の変化を把握し、リスクと機会を特定し、事業計画に反映させています。これらリスクと機会の内容は「戦略」で述べたとおりです。
リスク内容に応じてCSR・ESG推進本部から実行部門である各機構及び関係部署にリスク対応業務を指示しています。リスクの特定結果とリスク対応業務とその実施状況は、内部統制に関する環境委員会に四半期毎に報告され、取締役会にて年1回以上報告され、監督されています。
指標と目標
取組内容 | 指標(KPI) | 目標 |
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生物多様性の保全に貢献できる様々な製品開発 | ESG貢献製品の売上高 | 2024年3月期までに 2021年3月期比20%アップ |
大気の汚染防止に貢献できる環境への負荷低減 | 自社工場からのCO2排出量 | 2024年3月期までに 2021年3月期比70%ダウン |
自社工場からのVOC排出量 | 毎年 対前年度比1%ダウン | |
水系の汚染防止に貢献できる環境負荷低減 | 自社工場からの排水量原単位 | 毎年 対前年度比1%ダウン |
近隣の清掃活動や生態系の保全活動の取り組み事例
静岡県磐田市「桶ケ谷沼」の外来種防除 東海製造事業所
桶ケ谷沼は、静岡県磐田市の北東部に位置する沼で、環境省レッドリスト2020の絶滅危惧ⅠA類(CR)に指定されているベッコウトンボをはじめ、日本に生息するとんぼの約3分の1である71種類が確認されている国内有数の「トンボの楽園」として知られています。磐田市環境水道部環境課と自然保護団体、地元企業12社と連携し、沼の水質悪化の原因ともなる外来種のアメリカザリガニやミシシッピアカミミガメの防除を行いました。
荒川河川敷清掃活動「荒川クリーンエイド」に参加 東京製造事業所
荒川の流域人口は1,000万人とも言われており、河口域に漂着・堆積するゴミが問題となっています。荒川河口域に生息していると言われる「トビハゼ」は環境省レッドリスト2020の準絶滅危惧(NT)に指定され、保護活動が行われています。荒川河川敷の環境保全を行うため、自治体、企業、学校、市民団体などが連携し、清掃活動を行う「荒川クリーンエイド」に参加しました。
畔田谷津ワークショップ 佐倉製造事業所
佐倉市の佐倉西部自然公園(仮称)予定地内の畔田谷津は、関東平野における典型的な谷津環境が残る地域で、昭和30年代の里山景観の復元を目標に、谷津田や斜面林の田園環境の回復・整備が行われています。環境省の「生物多様性保全上重要な里地里山」に選定されており、カエル類・昆虫類をはじめとする多種多様な生物が溢れる自然豊かな環境です。自治体や地域住民と協働で、環境保全事業の一環として湿地環境の整備などの管理作業、整備内容の検討、生物の調査や観察などに参画しています。
2024年6月10日
野生動植物の保全を目的に田んぼの除草作業を行ったほか、ハナショウブとノハナショウブの交雑を防ぐための刈り取り作業を見学しました。